プライスレス


今から数年前に来られたお客様の話になるが、
あるお客様が真珠の糸替えの為にご来店された。

「親子3代に渡り受け継いで来られたものなので、劣化はしているものの、
未来のご子息にも受け継いでいきたいので、綺麗にして欲しい」とのご要望だった。

一目見て「あれっ、おかしいな」と感じた私。
手に触れた瞬間に、それが確信に変わった。

真珠屋を長年やっていると、稀にあることなのだが、お持ちになった真珠が
本物ではないと申し上げるときの、お客様の表情を見るのが辛い時がある。

そのお客様は、ショックもあって、すぐに処分するかどうか迷われていたのだが、
その物自体は真珠としては本物では無いとしても、3代に渡り引き継がれてきた大切な物。
沢山の思い出の一コマに、この真珠風ネックレスも花を添えて来たはず。

「真珠としての価値はなくても、思い出と共に生きてきた宝物じゃないですか。
例え使わなくても、綺麗にしてからもう一度、どうされるか考えて下さい」
とお願いして、加工後にお持ち帰り頂いた。

それから数年たち、今度はそのお客様が、娘さんとお孫さんを連れてご来店を頂いた。

その時の真珠風ネックレスをお持ちになり、
「これと同じに見えるこれ以上の真珠をください」とのご注文。

少し寂しくも嬉しい気持ちを堪えながら、
お目に叶う真珠をご案内させて頂きました。

ありがとうございました。

わたなべ

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